【印刷用レイアウト】

抜け殻

店の軒先の、数十年前に施工され、今は、ただ草臥れてしまったコンクリートの上に、
ポツリと存在した蝉の抜け殻。
容赦無い陽射しが、庭先に照りつける。
太陽が其の抜け殻から、僅かばかり残っていた生気を吸いとっていくように。
窓越しに覗いているのに、其の殻の乾いた音が聴こえてきそうだ。

最初はそう感じた。
「音が聴こえてきそうだ」と。
気づけば、辺りの気配は静まり返っている。
時刻は夕方のいくらか前、15時を半ば廻ったところ。
すると、隣町から微かに聴こえて来る夏祭りの太鼓の音の様に、
小さくはあるが、芯のある音が悪戯に鼓膜を突いてくるではないか。

抜け殻 / 陽射し / ・・・
抜け殻 / 陽射し / ・・・
抜け殻 / 陽射し / 《・・・》は、なんだろうか。

囁く様に小さかった音が、少しずつではあるけれど次第に耳に届いてくる。
神輿の練が通りを廻って来るように、少しずつ聴き取れる音となっていく。

・・・/・・/・・・ ・・・/・・/・・・ ・・・/・・/・・・

「リズムだ」

幾重にも重なる其のリズムの、其のひとつの打音は、か細く跡形も無く消えてしまう。
其の打音を、薄い層を成した菓子の様に一枚一枚と丁寧に重ねていく。
気の遠くなるような作業がリズムを生む。
消え行く音を幾重にも重ねるのだ。
すると、消えたはずの音が、"ポワン"と耳の中で反響する。
どの音が今打った音で、どの音が反響音なのかが次第に解らなくなってくる。
しかし、其の "不明瞭"とも言える、幾層にもなった音の世界にしばらく身を寄せていると、
不明瞭"="不安"ではなくなってくるのです。
むしろ、其の "不明瞭な音の世界" に浸っていたい。
此の曲の何処が始まりで、何処が終わりなのかすら意識しなくなっている状態が、心地良い。

暑い昼下がりは、そんなカリンバの音が良い。
真夏と言うのは、わりかし"緊張"しているのかもしれませんね。
体の張りがとれて、ついウトウトしてしまいます。
仕事中だというのに。

御来店の際、お車は一組一台でお願いしております。 
ご無理申します。
御理解頂けますと幸いです。 

8月10日 水曜日は、定休日となります。
宜しくお願い申し上げます。

日々を綴る

2016年8月
« 7月   9月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
カテゴリー
最近のエントリー
アーカイブ

ページの先頭へ戻る