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記憶と年月

雨に打たれた蜘蛛の巣は美しい結晶飾りとなっていました。


幼い頃、どきどきしながら雨上がりの四角家の扉を開いたときのことを、今でも鮮明におぼえています。
三角形の屋根で木の扉というのが一軒家の形であると認識していたわたしにとって、
四角形、コンクリートの壁、真鍮ヒンジの重たい鉄扉、部屋の中に突如現る階段のある建物というのは
「住まい」ではなく「働く場所」の建物のように感じていたと記憶しています。

三十年の年月を経て、私自身が鉄扉の錆を落とし、壁を塗り、あたらしい風を通すことになるとは、
当時のわたしには想像する術もなかったことでしょう。


以前、親しい友人に、「雨の日に混雑しているカフェが好きだ」と話をしたことがあります。
何をするわけでもなく、好きな文庫本を携え、時間をかけてコーヒーを啜り、
ふと窓辺に目をやると、夕暮れの足音が聞こえている
そんな時間の過ごし方が、ときに大切であったりするのかもしれませんね。

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