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土筆

シトロエンのドアを閉め、
そして、其の場を立ち去ろうとした際、
うっかりと、鍵を落としてしまった。
やれやれ、手荷物の多い時に限ってこれだからと、
荷物はひとまずボンネットの上へ、
腰を屈め、其の鍵を拾い上げる際、小さな春を見つけたのであった。


ムッシュ:やあやあ土筆さん、危うく見逃すところでした、ご機嫌如何ですか、土筆さん。


つくし:なによあんた、ご機嫌も何も、危うく踏まれるところだったわ。何処見てほっつき歩いてるのさ。


ムッシュ:それは失礼しました土筆さん、しかしながら見事な袴ですこと。


つくし:なによあんた、それで口説いてるつもり?あたしなんて煮ても焼いても喰えないわよ。


ムッシュ:土筆さん、あなたは春の季語なのです。特に都会生活者にとっては、ご馳走なのですよ。


つくし:あら、そうなの、あたしもそろそろトーキョーの土に生えようと思ってたところよ。


ムッシュ:ええ、そうでしょうとも土筆さん、「つくしのキッシュ」なんて色気があって素敵ですよね。


つくし:なによあんた、なにが色気よ、キッシュだって?あたしはフリッタータになりたいわ。   


ムッシュ:ええ、もっともですよ土筆さん、フリッタータこそ、あなたの素性の良さが活かされるはずです。


つくし:なによあんた、自棄に物分りがいいじゃない、あんた、フリッタータ作れるのかい?


ムッシュ:まあ、作れないことも無いですが、所詮田舎のコックですので、御めがねに適うかどうか。


つくし:なによあんた、それでも男なのかい、だから嫌なのよ、田舎の男は、この味噌っかす。


ムッシュ:いやはや、あなたの素性の良さを活かせるかどうか悩めるところなのです、土筆さん。


つくし:ツベコベ言ってんじゃないわよ、あたしを引っこ抜いてさっさとやりなさいよフリッタータ、


ムッシュ:いやはや、土筆さん、出来ればもう少しお仲間を集めて頂けると助かるのですが。


つくし:ちょっとあんた、あたし一人じゃ味もヘッタクリもないって訳?、ちょっと、なに後退りしてるのよ。


ムッシュ:いやはや・・・


2013年、こんな春の嵐が起きたり起きなかったり。


3月6日 水曜日は定休日となります。
宜しくお願い申し上げます。

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