【印刷用レイアウト】

冬山

長い長いトンネルをぬけると、辺りは雪景色。 
前後のフォグを点し、ギアを3速に落として速度を低めに保つ。
外気温-7℃という表示に、少しばかりうろたえていると、
スタッドレスタイヤが、ガリガリと氷を砕くような音をたてる。
県境を越すと、本物の冬が其処に在る。
雪降るゲレンデを存分に楽しみ、旨い蕎麦をたいらげ、
そして、氷柱を眺めながらの露天風呂。
頭に雪が積もるも、身体はホカホカと温かく、
湯煙の中、いつもの他愛も無い話で仲間と一時間ばかり戯れる。
土産に自然薯を買い求め、
明くる日に、とろろ飯をこしらえ、
今冬は、少しばかり冬山に靡きそうな自分の気持ちの振れを感じ取り、
とろろ飯をズリズリと喉の奥へと押し込んでゆく。

2月1日 水曜日は、定休日となります。
宜しくお願い申し上げます。

2012

あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。

元日のこと。 
昼を過ぎた辺りに、近所の神社に詣でる。
清らかな空気に包まれながら参道を歩く。
其の足で、遅めの昼食を購入すべく、
仏料理の店 [kitchen Blanche blanche plus+]まで歩みを進める。
オーナーと新年の挨拶を交わし、店内のデリカテッセンにて、品を選ぶ。
フロマージュ、キッシュロレーヌ、和牛頬肉の煮込み、海老のスウィートチリ風味、
ローストビーフのバゲットサンド、クロワッサン、パン・オ・レザン、シナモンロール、
デザートに、ガレット・デ・ロア、ミルフィーユを袋に詰めて頂く。
自宅に戻り、其れ等手の込んだ料理を文字通り食卓にひろげ、
オーストリアの微発泡の白とともに、きれいにたいらげる。

残ったグラスのワインの傍らには、「見えない音、聴こえない絵」大竹伸朗著のエッセイ集。
昨年末に読み終えた、「私のヨーロッパ」犬養道子著も興味深い一冊となりました。

2012年は、1月5日木曜日より営業させて頂きます。
宜しくお願い申し上げます。

椅子

良い椅子の定義とは。

わたしは、名のある方がデザインした椅子などについて、あまり知識もなく、
椅子について、さして詳しくもございません。

ただ、自分にとって良い椅子といえば、
真っ先に浮かんでくるのは、1970年代後半から80年代にかけての仏車のシートとなります。
柔らかな座面が、すっぽりと身体を包むあの感じは、なんとも心地よく、
賛否はあれど、わたしにとって「良い椅子」といえば其れでした。

また、今現在、わたしの住まいの片隅にポツリとおいてある、
くたびれた、水色の独り掛けの椅子も重宝しています。
少しばかり低めの座面に、身体が適度に沈み込む座り心地は、
やはり、一昔前の仏大衆車の其れであり、
ほころびや、破れがあろうとも、
読み物の際には、現在進行形で活躍しております。
この椅子は、某大学で使用されていた中古品でしたが、
これを譲ってくれた友人の住まいにも、同じものがありました。

おそらくは、彼も其の椅子に座り続けているのではないかと、
梅の花咲く、春に想う。

3月9日 水曜日は、定休日となります。
宜しくお願い申し上げます。

名月と海辺の夜

渥美半島の岬から眺めた、とある一夜の月。 

みごとな月は、海辺のわたしたちをほのかに照らします。
タープの下、四つのランタンとワインが数本、
笑いの絶えない仲間と過ごす緩やかな時間。

伊良湖水道を航行する貿易船の汽笛、
時に、対岸の空で黄光瞬く雷と、散りばめられる無数の星、
会話の合間に耳に届く波音、

月の静かな動きとともに、夜はまどろみを帯び、
日付の替わる頃には、わたしの瞼も落ちてゆき、
いつもより静かで、特別な夜が静かに、そして静かに更けてゆく。

夕焼け

昨日の雨も上がり、 
幾分湿度を含んだ晴れの日でした。 

日没前、キッチンの窓が紅色に染まりました。
庭に出て眺めた西の空は、
美しく焼けていました。
夕焼けというのは、
眺めている間に刻々とその色合いを変えていきます。
わたしは、夕闇が夕焼けを包み込んでしまうその手前の空が好きです。
その沈みゆくものを止める手立てはなく、
ただただその場に立ち尽くし、そして眺めるその空は、
その日の終焉を告げるに相応しく、
時計で知る時刻よりも、
より現実的に明日に近づいていることを教えてくれます。

さて、明日の空はどのような空でしょうか。
天気予報で知る明日の空より、
今夜の空で明日を占う。
わたしのささやかな夜の習慣です。

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