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ムクドリ

雨の間を通り抜けるように晴れ渡った午後、 
青い果実をぶら下げた、無花果の木を見上げている折、
斜め後方より、鋭い視線を感じた。
眼光の主は、電線に腰を据えているムクドリであった。
例の如く、果樹の様子を探りに来た様子。


ムッシュ:
やあやあムクドリ君、随分とご無沙汰しておりました。
相も変わらず立派な其の嘴には、マスタッシュなお髭が似合いそうですねムクドリ君。
ムクドリ:
hello ムッシュ、電線からの上から目線でご無礼するぞ、
マスタッシュか、カウボーイみたく帽子とブーツにも気遣いたいところだな、
ところで、なんだ、えっへん、あー、その、ほれ、無花果、いや畑、今年の畑はどうだねムッシュ。
ムッシュ:
やあやあムクドリ君、畑はみての通り、いろいろと実っております。
先程から、ちらちらとご覧になっている無花果は、今年も沢山の実をつけております。
剪定係の話ですと、沢山の実がつくよう、師に教えを仰いだとのことです。
九月中頃が楽しみでなりませんねムクドリ君。
ムクドリ:
hello ムッシュ、何を言って居るのだ、無花果なぞ、わしの目の端にも入っておらん、
今言われて、初めて其処に無花果の木があることを知ったまでだ。
わしは、ちーとも取り乱しては居らんぞムッシュ。
ムッシュ:
やあやあムクドリ君、これはこれは、失礼致しました。
でも心配ご無用です。昨年同様、我々の手の届くところの実は我々が頂戴し、
其処より高いところの実は、ムクドリ君に差し上げます。
昨年同様、ご家族、ご友人お誘い合わせの上、九月中頃においで下さいませムクドリ君
ムクドリ:
hello ムッシュ、そこまで丁重に招待されては、わしも断りの言葉が見つからんぞ、
まあ実が熟す頃までは、このわしが、全責任を背負って此の無花果の木を監視してやるぞ、
虫の一匹すら寄せ付けんからな。警備会社など必要御座らん。
ムッシュ:
やあやあムクドリ君、これはこれは頼もしいお言葉を頂きました。
しかし無花果には目が無いのですね。
今年の実りの時期も賑やかになりそうですねムクドリ君。
ムクドリ:
hello ムッシュ、あんたは、其の無花果を赤ワインで煮たり、オーブンで焼いたりするんだろ?
わしは、木にぶら下がって居る奴を、早撃ちガンマンも怖気づく程のはやさで、
貪り食うのだよ、余所見なんてしている暇は無いぜムッシュ。


といったやりとりが、あったとかなかったとか。


6月27日 水曜日は、定休日となります。
宜しくお願い申し上げます。

梅雨

紫陽花が花をつけました。


空から雨が落ち、
雨粒が木々の葉を濡らし、 
葉から露がこぼれ、
地面に生える草花が雫を受け止める。


客足の引いた店内は、休講になってしまった大学の講義室みたくガランとしている。
隅に置いてある椅子に腰掛け、窓越に雨の様子を眺める。
熱を含んでいた気持ちが、次第に落ち着きを取り戻す。
雨の日には、こころ静める不思議な何かがあるような気がします。


6月20日 水曜日は、定休日となります。
宜しくお願い申し上げます。

宵の口

木々の深い緑がハロゲン球に照らされる宵の口、
昼間の熱を、夜風が冷ましてゆく。
スピーカーからは、Carole King。
いい夜だと思いました。


6月13日 水曜日は、定休日となります。 
宜しくお願い申し上げます。

ジャマイカ人が営む床屋

とあるエッセイの文中に、
ロンドン南部の町にある、ジャマイカ人が営む床屋の話がありました。
日本人からしてみると、すべてがルーズに感じる其の営みは、
裏を返せば、時間に捕らわれず、淡々と、日々の生活を進めていくという極人間らしい営みでした。
たかが5分、10分のことに目くじらを立てねば成らぬ様な慌しさや、
午前午後と、缶詰の様に予定がびっしりと詰まっている休日、
同じ日の、同じ時刻、同じ方角に向かうが故、生まれる車の長い列、
充実した日々とは、如何なるものなのであろうか。


ロンドン南部に住む、其のジャマイカ人の床屋のおじさんのことを考えると、
わたしも、幾らか呼吸を整え、歩みを緩めることができます。


6月6日 水曜日は、定休日となります。 
宜しくお願い申し上げます。

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